今回は、ナディアが一人で学院の論理に晒され、崩れかけるところから始めています。相手の学生たちに悪意を持たせず、「出力は十二分の一以下」という具体的な数字で淡々と詰めさせたのが今回の肝です。感情的な嘲笑ではなく、構造的な正しさで押し潰されていく怖さを書きたかったので、学生たちの台詞には最後まで感情語を入れていません。
ナディアが「自分が感じてきたものを、言葉にできない」まま追い詰められる過程は、これまでの「分かった気になる」彼女の延長線上にあります。知識ではなく感覚で学院に惹かれてきた彼女にとって、ここは初めて、感覚だけでは太刀打ちできない場所として立ちはだかります。
れもんに「比較として成立してない」と冷静に分析させてから、メリアに反論させる流れは、今回かなり丁寧に組み立てました。メリアの「測れていないものと、測る指標がないものは別の話です」という一言は、このシリーズ全体を通しても一、二を争う硬質な台詞です。感情で庇うのではなく、相手と同じ土俵の理屈で、しかも一段上から返す。ナディアを助けるという行為を、やはりメリアらしい形でやらせたいと思って書きました。
「優先度の話と価値の話は別です」で学生たちを黙らせたあと、完全な勝利にはしませんでした。「完全には、崩れていない」という一文を残したのは、学院の論理がこの一言だけでひっくり返るほど単純ではない、ということを示しておきたかったからです。
ラストの「興味深い」という声は、次話への引きとして置いています。誰なのかは、今はまだ明かしません。

