前話で仕込んだ「3日で3回返品」の1回目です。今回は、失敗の瞬間そのものより、
失敗に至るまでの助走を丁寧に書きました。見習いが訓練場で少し声を張り、動きを
大げさにする――誰かに見られている前提での詠唱にしたのは、そのあとの「何も
起こらない」の落差を大きくするためです。
一度目の失敗のあと、すぐには杖のせいだと思わせず、もう一度、今度は見栄を
張らずに正確にやり直させました。ここで成功していれば「実力不足」の話になって
しまうので、二度目も完全に沈黙させることで、原因が杖にあることを読者にだけ
先に確定させています。
恥と苛立ちが遅れて湧いてくる描写は、コメディの温度を保つための調整です。
すぐに怒らせず、赤面から始めて、最後にようやく「ふざけんな」に着地させる。
感情の順番を丁寧に追うことで、深刻になりすぎないようにしました。
店に戻るまでの間を、迷いのない足取りだけで一気に運んだのも意図的です。
反省や葛藤を挟まず、勢いのまま「返品します」に突入させることで、
スピンオフらしいテンポの軽さを保っています。

