第2話 銀風街道にて

銀風街道にて 制作秘話

 三日目という時間経過を、説明ではなくナディアの「慣れ」で見せる書き出しにしました。
馬車の揺れに体が馴染んでいく感覚だけで、何日経ったかを伝えたかったからです。

 れもんの地形解説は、今回かなり長めに喋らせています。風が丘を越えて加速するという
具体的な現象を挟むことで、銀風街道がただの背景ではなく、設計された場所であることを
改めて示す狙いです。この手の蘊蓄を遮らずに最後まで言わせたのは、ナディアが「なんと
なく」としか理解できない、という落差をあとで作りたかったからでもあります。

「観測と選択の問題です」というメリアの答えは、今回いちばん意地悪に書いた一言です。
本人は本当のことしか言っていないのに、ナディアには届かない。れもんに「ちゃんと全部
本当のことしか言ってない」と代弁させることで、素っ気なさが不誠実さではないと、
読者にだけそっと保証しています。

レオンの「温度差えぐいな」は、このすれ違いを深刻にしすぎないための緩衝材です。
噛み合っていないことそのものを笑いに変えることで、三人の関係がまだ途中段階で
あることを、重苦しくならずに見せられたと思います。

ラスト、メリアが誰にも気づかれない程度に頷く場面だけを、今回唯一の進展として残しました。

次回公開

10月14日21:00
第3話 屈折の理論

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