第32話 結晶の違い

結晶の違い 制作秘話

 解体シーンをどこまで書くか、今回は結構迷いました。目を背けたくなるような
作業を、メリアは最初から最後まで見ている――ここは削らずに書くと決めていました。
目を逸らさないことと知ることが、彼女の中で同じ意味を持っている、という設定を、
説明ではなく視線の描写だけで伝えたかったからです。

 血のついた布に触れて「温かい」と呟くところは、生き物だったものの最後の温度、
という一文だけで十分だと思い、それ以上の感傷は書き足しませんでした。

「魔族のときは?」というメリアの問いは、実は世界観への軽い橋渡しです。邪神由来の
歪んだ魔石という設定を、ここで長々と説明せず、れもんの短い返答だけで匂わせています。
読者が気になれば拾える程度の情報量に留めたつもりです。

 レオンの「守るためにやってる」は、独白というよりほとんど独り言に近い温度で
書きました。誇りでも言い訳でもなく、ただ事実として置く。ヒーロー的な台詞にしたく
なかったので、視線を手元に固定したまま言わせています。

「……命そのものじゃない?」というメリアの問いに対して、れもんが「副産物」と
即答するのも意図的です。感傷に流れそうになる場面を、れもんの淡々とした返しで
一度冷やす。この温度差の作り方は、31話から続けている二人の呼吸のつもりです。

 最後の「じゃあ、もらう」は、決意というより、ごく静かな受け取り方として書きました。
この重みが、そのまま33話の腕の中の重さに繋がっていきます。

次回公開

9月9日21:00
第33話 手を汚すということ

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