今回、一番悩んだのは「いただきます」という台詞を、どこに置くかでした。
31話、32話は「知ること」の話でした。魔石の正体、命が結晶になる過程、
レオンの手つきに宿る積み重ね――メリアはずっと、目を逸らさずに見ていました。
ただ、33話で書きたかったのはその先です。知ってしまった後、どう生きるか。
「命もらう、言いながら喰ってるのは、矛盾してないか」
このレオンの一言は、プロット段階にはありませんでした。書いている途中、
彼なら絶対に茶化さずまっすぐ聞いてくるだろうと思って、足しています。
レオンは口数が少ないキャラクターです。だからこそ、少ない言葉に重みを
持たせたくて、この台詞もその一つになりました。
メリアの「受け取る」「自覚だけは持つ」という返しは、彼女らしい割り切り方です。
49歳だった前世の倫理観と、17歳として生きる今世の生活が、地続きになっている。
説教くさくならないギリギリのラインを狙って書きましたが、うまくいったかは
まだ自分でも判断がつきません。
れもんの「宗教でも、呪いでもないよ」の一言は、二人だけでは重くなりすぎる場に、
第三の温度を差し込む役目です。この温度調整が、れもんという存在の一番大事な仕事だと
思っています。
森から街へ。土の感触から石畳の感触へ。足元の変化で場面を切り替える演出は、
今回、わりと気に入っています。腕の中の重みだけが変わらない、というコントラストも含めて。
次話は第2章エピローグへと進みます。
次回公開
9月12日21:00
第34話 街の人気者メリア


