第31話 ただの石?

ただの石? 制作秘話

 この話は、動きの少ない場面から始めたいと思っていました。月兎亭の光の中で、
メリアがただ魔石を見つめている。それだけの時間です。

「結晶体。自然循環由来」

 れもんの説明はいつも通り簡潔ですが、メリアが引っかかったのは「結晶体」という
言葉のほうでした。前世の「エネルギー」という概念は、もっと抽象的で形を持たない。
目の前の石には、構造がある。この違和感を、説明ではなく「動いてるけど、動いてない」と
いう呟き一つに寄せたのが、この話でいちばん書きたかった部分です。

 れもんの「詩的発言」というツッコミは、メリアの内省が湿っぽくなりすぎないための
調整弁です。れもんが茶化す役に回ることで、メリアの思考をシリアスに保ったまま、
読み口は軽くできる。この二人の距離感は、毎回この配分で決めています。

 森での戦闘は、今回はレオンの技術を見せるための場面です。「最適」というれもんの
一言だけを合図に、レオンが最短で仕留める。派手さより、無駄のなさを描きたかったので、
擬音も動作もかなり削っています。

 そして、「……痛かったのかな」。

 これまで何度も狩りに同行してきたメリアが、この問いを初めて口にする瞬間です。33話に
繋がっていく最初の一歩を、ここに置きました。「短くした」「短く終わらせる」というレオンの
返しも、覚悟を語らせすぎないよう、あえて短く切っています。

次回公開

9月5日21:00
第32話 結晶の違い

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